「うわっ……ぷ…」 胸まである黒髪が、風に舞ってバッサバサとたなびく。 正直、迷惑だ。 ほんの一瞬で風がやむと、私は手櫛でなんとか髪を落ち着かせた。 それをずっと見ていた小林君は、クスクス笑いながら私の髪をソッと掴むと、 「サラサラで綺麗だな」 そう言って、前に移動していた後ろ髪を丁寧に元に戻し始めた。 ……ちょっ ちょっと待って! あまりに近くて。 男の子とこんなに近づいた事なくて。 私は固まって一言も話せない。 .