―彼氏と彼女―





“飼えもしないのに、一瞬の仏心は残酷”



 子供の頃、母親に耳がタコになるほど言われた言葉。






 ―――が。


 俺はいつもは素通りの公園内に入り、迷うことなく子犬の元へ向かった。




「キャン……キャンキャン」


 しゃがんで子犬をその腕に抱えると、子犬は喜んで俺の顔を舐め回す。



「……ふっ はははっ
 やめろって…!」



 くすぐったくて、可愛くて……しばらく子犬と遊んでいたら、後ろから足音が聞こえた。





「……あ………」



 あの赤い傘―――…




 それは、さっきいた女子の、後ろ姿。


 やっぱり気になって戻ってきたのか……。