「………」



 そして、一メートルほど離れた場所で、赤い傘を差した女の子が子犬を見ていた。


 同じ中学のセーラー服の女子。

 ジッと見ていると、話したことはないけど、同じクラスの女子だと気付く。


 ………名前までは知らないけど。





 女子はキュッと口を結んで、子犬を見ている。
 そして、さしていた傘を、子犬の方へ傾けた―――。


 子犬は遊んでもらえるかもと、尻尾を振って喜ぶ。……が、そんな期待むなしく―――



「………っ」



 その子はボロッと大粒の涙を流して、小さな声で、「ごめんなさい」と言うと、差し出した傘を手に、そのまま立ち去った。







 理由は、分かった。