七夕の決戦から早9ヶ月を迎えようとしていた春の日、


今年も去年に増して大輪の桜が街の至る所で彩っていた。





僕は…





僅かな奇跡を信じて、奈美とかつて約束していた桜の木の下で、奈美の姿を待っていた。


本当はあの試合日以降、奈美の事を忘れようと思っていた。


そして、前向きに生きていこうと思っていた。





時折吹く春風が、桜の葉を舞わせる。


そんな舞い散る桜の葉を眺め、奈美の姿を待ち続ける。


「もう、何年も前の話なんて忘れているよな。それに、来るわけなんてないよな。ヒドい別れ方だったしな」


僕は桜を見ながらそう呟いて、時計に目をやり、そろそろ帰ろうとその場を離れようとした。





その時だった…