くしゃり、頭へと乗せられた手と共に疲労の滲んだ声が降る。
「おーまーえーはっ!逃げんなっての」
「わ、」
乗せられた手はそのままに顔だけを上へ向ければ、眉間にぐっと皺を刻んだ汰人が私を覗き込むように見下ろしていた。
奥の方では子供達の楽しそうな別れの挨拶が飛んでくる。きっと存分に遊んでもらったに違いない。
「聞いてんのか、桔梗」
「ええと…その、ほら!顔出したの久々でしょう?偶にはいいじゃない?」
「おい挙動不振だぞ」
「そ、そんなことないけど」
「お前な……。子供って複数集まると相手すんのめちゃくちゃ辛いんだぞ…」
「……。まあね…」
確かに相手をするにしろ、1人はキツかったに違いない。とはいえ最近顔を出さなかったのだから偶にはそれも経験すれば良いのだ。
疲弊しきった声につい苦笑いを浮かべていれば向かい側から「お疲れ様」と声がかかる。
汰人が来た時には私ももういつものペースに戻っていて、もう一度向かい合う彼へと顔を向けることが出来た。
「全くだ、本当」
「人気者で良かったじゃないか、汰人」
「……先生は素で言ってんのかワザと言ってんのか区別付きにくいんだよ」
ジト目で彼を見据えた汰人は私の頭から漸く手を離すと、はぁっと溜息を吐き出して何とも言えない表情のまま首を掻いた。
