ふと長い沈黙に気が付いて視線を移せば、彼は私をじっと見つめながら考え事でもしているようだった。
「せんせ?」
声をかければ彼はどこかへ向けていた意識を私へと戻しどこか悪戯っぽい笑みを浮かべた。内緒話でもするかのように少しだけ身を乗り出して頬杖を付いた彼に自然と距離は近くなる。
「そうだ、桔梗は汰人と祭りを回るんだってね?」
「そう、だけど…汰人に聞いたの?」
「いいや?さっき話してるのが聞こえただけさ」
不意打ちとも呼べる彼の言葉に私は言葉をつかえないように紡ぎながらも酷く落ち着かない気分だった。
私が行くと決めた事だし、別に何かしたとかそういう訳でもないけれど彼の反応が気に掛かって、胸のあたりが上手く空気を取り込めず空いたような、何とも形容し難いものになる。
肯定を口にしながらも手は落ち着かなさを表すように、頬杖を付くのを止めて髪を耳へと掛けるように動いていた。
「、ええと」
「桔梗と汰人は浴衣を着るのかい?」
特に何を言いたいわけでもなく、何かを取り繕うように発した声に被ったのは物珍しそうな彼の言葉。
「え、と……そうね。汰人は分からないけれど」
「ほう」
「………。」
彼にしては珍しく何か気に掛けたのかと思ってしまったけど、興味があったのはそこかと喉元まで出そうになったため息を何とか留めた。
