撮りとめた愛の色






「随分と人気者だね、汰人は」

「せんせ」



逃げるように奥の方へ腰を下そうとすれば、近くで胡坐を掻いていた彼がしみじみと呟きながら私に声をかけた。


「桔梗はいいのかい?遊んでこなくて」

「捕まる前に逃げてきたの。流石にそんなに体力が有り余ってはいないから」

「嗚呼、子供は元気だからねぇ」


彼の苦笑交じりの言葉に深く頷く。汰人は最近来てなかったんだし今日くらいはちゃんと相手をすればいいのだ、なんて考えながら私は足を伸ばすように机を挟んだ彼の向かいに座った。


「まぁ汰人を見るのが久々みたいだし、遊びたくて仕方なかったみたい。ずっとソワソワしてたもの」

「レポートに追われていたらしいけど、桔梗は平気かい?」

「私はまだ。汰人のとこほど多くはないし、重なる前に極力出すようにはしているから」

「ならいいけれど。話し相手がいないと言うのは案外味気ないものだからね」

「せんせでもそんな事思ったりするの?」


想像が付きにくくて聞き返せば、彼は「ひどいね」と緩い口調で返事を返す。


「言ってることは分かるけど…。だってずっとのんびり構えてるものだから」


正直、人がいてもいなくてもあまり変わりそうには見えない。


「まぁそれは良く言われるかな」


苦笑交じりの彼の声に外で遊びまわる子供たちの声が重なる。それに心地良さを感じながら私は頬杖を付いた。


ふと、こっちをじっと見つめる彼に首を傾げてみれば彼はしみじみと呟く。



「桔梗は桜も似合いそうだね」

「え?せんせってばどうしたの、急に」


唐突な言葉に苦笑しながら、頭の中では桜、と反芻しつつ何でもないかのように言葉を返す。