撮りとめた愛の色





今にも蝉が鳴き出しそうな快晴の中、カランと氷がグラスにぶつかって音を立てる。

奥の机では丁度腕相撲が終わったのか随分と盛り上がっていて、楽しそうな声が溢れている。その中で着物を身にまとう彼は後ろで見守るように静かに立っていた。



「─────……」



それだけなのに目が惹き付けられたまま逸らせなくて。その視線に気がついたのか、彼はそっと顔を上げるけれど、



「桔梗?」

「っあ、ごめん。なに?」



彼が顔を上げるよりも早く汰人が私を呼んで、私は誤魔化すように視線を移した。




不思議そうに汰人は私の視線を辿って何も言わずに再び口を開く。



「あー…、来週の夏祭り何時に行くかって聞いたんだけど」

「決めてなかったっけ。汰人は何かある?」

「あーじゃあバイトあるし昼過ぎくらいになるけどいいか?花火始まるの19時だし」

「うん大丈夫。どうせ夜こっち来るし、早すぎても疲れちゃいそうだものね」

「若くない発言だな」

「だってそうじゃない。人混みって特に気疲れするでしょう?」

「まぁな。じゃ、バイト終わり次第迎え行く」




「たいにーきょーねー!」



そこで会話が切れれば、パタパタと軽やかな足音が近づいて私たちの前に帰り支度を整えた数人の子供たちが立っていた。


「嗚呼、今日は終わったの?」

「うん!今日はもうかえる」

「たいにーあそぼー!」


久々に会った汰人に喜ぶように誘いを口にする子供たちに引っ張られながら汰人は立ち上がる。なんだか大変そうだと他人事のように思いながら、巻き込まれる前にとそっと避難の体勢に移った。捕まっては大変だ。