撮りとめた愛の色



「嗚呼…。それ、こないだ撮ったやつかな」


映っていたのは画面いっぱいが茜色へと染まった近くの土手で子供が駆けている何気ない風景。下校時間のごくありふれた光景を偶然とらえただけの一枚だ。


「綺麗に撮れたから残してたの」

「へぇ…やっぱ桔梗って上手いよな。撮り方っつーか見せ方?みたいなさ」

「偶々でしょう?タイミングがいいのよきっと」

「褒めてんだから素直に受け取れっての」

「ええと、…うん」


ぎこちない返答に「何だそれ」と呟いた汰人が苦笑を漏らす。滅多に口にすることのない汰人の褒め言葉は言われ慣れなくて、どうしてか少しむず痒いのだ。


「嫌味にしか聞こえないってか?」

「そんなことはないけど……あ、そういえば。汰人の気に入った写真って評判がいいの」


思い出したように口にすれば、汰人は首を捻って聞き返した。


「評判?」

「うん。こないだ汰人が良いって言ってた写真ね、先輩にもそれが一番良いんじゃあないかって褒めてもらった」


そうなのだ。汰人が気に入った写真はなにかと、みんなからの評価が高い。なんでもない見落としがちな一枚だってそうだ。


「まぁ誰かしら好みっつーのはある程度同じだしな。それこそ偶々だろ?」


カメラを私へと返した汰人は前を向く。

そっけない返答に素直じゃないのはむしろ汰人じゃないかと思ったけど、口にはせず私も視線を前へと戻した。