撮りとめた愛の色




「別にいいけど日射病とかにはなるなよ、面倒だから」

「これくらいでわざわざこっちに呼ぶくらいだもの。汰人がいるから平気」


過保護な汰人のことだ。一度日射病になりかけたことがあったから、たぶんこっちに呼んだのはこれが本当の目的だろうと思う。

私の返答に面食らった顔をした汰人は「…まぁ、お前も気を付けておけよ」と付け足した。



「さっき何撮ってた?」

「、え」

そういってつい、と汰人が伸ばした腕から逃れるようにカメラを持ち上げる。空振った腕はカメラを掠めると不機嫌顔でそのまま私の頭を軽く小突いた。


「………なに、隠し撮りでもしてたわけ?」

「いや、違うけど。ちゃんと撮った訳でもないから、その、ええと。恥ずかしいじゃない」

「なんだそれ」

「なんかぼーっとしてたっていうか、ほら。なんにも考えないでただシャッター切ってただけだし」

「へぇ。そんで見せたくないって?」

「そういうわけじゃないんだけど…て、っあ!」


気を抜いた隙に伸びた腕が容易くカメラを浚って汰人の手中へと収まる。「そういうわけじゃないんだろ?」と聞き返した汰人に返すような言葉が出てくる訳もなく、データを見ている汰人の手元をじっと見つめていた。


「…………」

「…………」

「…………」

「………あの、無言で見られるのが一番怖いんだけど…。せめてなにか言ってくれない?」


何も言わずにデータを見ていく汰人に耐え切れずについ口を出せば視線は外すことなく「ん、」とだけ短い返事が返ってきた。


……いま相手をする気はないということか。



「これ、いいな」

「え?」



むくれたように視線を落としていればポツリ、汰人が呟いて。顔を上げた私は一枚の写真で止まったままの画面を覗き込んだ。