履きなれたスニーカーをとんとんと地面につけながら踵まで足を包む。ふと足元に落とした視線が隣に並べられていた一足に止まった。



「ん、どうした?」

「…もしかしてまた背伸びたの?」


さっきまでは座っていたからわからなかったけれど。私の質問に不思議そうに一瞬首を捻った汰人はすぐに「あー、靴な」思い当ったように何度か頷いた。


「うん、なんか大きくない?サイズ変わった?」

「良く気が付くな、そんなとこ」

「隣にあればそりゃあなんとなくはね」


薄茶色のブーツカットの靴でつま先にかけて流れるように臙脂色《えんじいろ》が広がっている。シンプルだけど中々お洒落なデザインだと思う。

私もこんな感じのブーティが欲しいと思わず考えてしまった。


同じようにつま先で地面をとんとん、数回叩いた汰人は体をスッと伸ばし隣に立つ私を見下ろす。



「───で、実際どう?桔梗から見て伸びてる?」

「…伸びたかも。とは思う」

「まぁ測ってないからわかんねぇし。靴のサイズなんてメーカーによるから気にしてなかったけど、伸びたのかもな」


汰人が引き戸を引けば、茜色が玄関口に差し込む。それに照らされるまま私も外へ出た。


前にいた汰人の遅い歩きに追いついて隣に並ぶと、いつもの私が歩く速さになっていた。


会話を交わしながら垣根を抜けて石階段を昇る。もう少し速度を上げたって構わないのにとは思うけどなんだかこれにすっかり慣れてしまった。


「…やっぱり汰人って過保護」

「あ?なんか言った?」

「ん、なんにも?」