午後に遊びにやってきた子供達が帰る頃には辺りはもう茜色に染まり始めていた。


「───と、それじゃそろそろ帰るか。桔梗」

「そうね。結構時間も経ってたみたいだし」


ぼんやりと空を眺めていた私は汰人の声に立ち上がり橙色を求めるように視線を滑らせる。


「先生はあの部屋に行った。俺から一応帰るっては言ってあるけど声かけてくか?」

「んー…どうしようかな。あの部屋でしょう?」


私達の言うあの部屋とは、以前に出展の清書を見せてもらった奥にある部屋のことを指す。彼にとってあの散らかりきった部屋は所謂《いわゆる》集中するための部屋のようなものらしい。


本人は気軽に来るといい、なんて言うけれど。あそこはどうしてもそんなに気軽には入れないし、自然と彼に許可を取って入るのが私の中では当たり前のことになっていた。


「やっぱ入りにくいか?」

「汰人も?…なんだかあそこって緊張すると思わない?」

「中にいるのはあんなユルイ人なんだけどなぁ」

「ユルイって…」

「間違ってねぇだろ。で?どうする」

「……声かけたならいいかな。どうせまた月曜も会うんだし、帰ろうか」



元々彼が何か集中している時なんかは何も言わず帰ることだってある。……言っても聞こえてないというのが正しいのかもしれないけど。とりあえず汰人が言ってるなら問題もないだろう。