真っ暗の中、
あたしは
何処に行くのかも、何故ここにいるのかもわからないでいた。

思いだそうとすると頭が痛くなる
ただ、進むだけ。
あてもなく歩いてる。

『あ…』

そんな中、目の前に光が現れ白い籠が見えてきた

『あれは…』

その籠には見覚えがあった。

あたしには幼い頃の記憶がある。
誰に話しても、
それは空想や思い込みだって言われてる
けど、あたしはあれは空想でも思い込みなんかじゃないってわかってる。
それは…

三井ゆみの始まり。

そう、あたしの人生の。

髪の色が派手で、赤いマネキュアがとれかかった爪、その手があたしをそこに降ろした。
あたしは泣いて泣いて、その人に手を伸ばしていた。

まだ自由に動かない手を一生懸命振って。
だけど、あたしの手はその人に届かなかった。

あたしにはあの人が必要だった…

あの人にはあたしは必要なかった…

『これは…夢…?』

目の前のあの籠は赤ん坊だったあたしが入れられてた場所と同じもの。

ゆっくり籠に近づいて、覗き込んでみた。
そこには赤ちゃんが顔を真っ赤にして泣いていてあたしは辺りをみまわした。

『誰かいませんかぁ?』

声は暗闇の中に吸い込まれて。
気味が悪い…。
ちらっと赤ん坊に視線をやるとジタバタしながら泣いていた。

『どうしよう…』

あたしはしゃがみ込むと赤ん坊をみて。
それにしても…
この子小さい時のあたしに似てるなぁ…

『あなたもママに置いていかれちゃったの?』

あたしはその子を抱き上げるとあやすように背中をぽんぽんと叩いた。
すると、ピタリと泣き止んで。
あたしがもう一度辺りを見回すと光に照らされた道が現れた。