そう、
昔を思いだしていると、目の前にいたはずの自分が消えていた。

あたしが部屋から出ると
玄関に
父と
おばちゃん
14歳のあたしがいた。

「じゃあ、送ってくるから。明日には帰るな」

父があたしに言う。

当時おばちゃんは東京に家があって
そこから来ていたのだけど、
あたしといるのも
限界だったんだろう。

帰る事になった。

「じゃあ、
またねゆみちゃん」

最初と同じ優しい笑顔

あたしも父の前では
普通に返事しかできない

「いってらっしゃい」

あたしが二人を見送る。

おばちゃんが玄関を出ると、昔のあたしは
安心した顔をしていた。

やっと父と落ち着いた生活ができる

そお、思ってた


でも


父は次の日、帰って来なかった。