恋花火

『きゃっ』

「おせーんだよっ」

頬がヒリヒリする。
いつもと同じだよ。
殴られることなんて…。
ただ、顔はヒドイよ。
あたしだって、女の子なんだよ?
痛いよ。

『ごめ…ん…なさぃっ』

先輩は、あたしが高校に入ってから変になった。
束縛が酷くなって。
次第には暴力を振るうようになって。
もう、あたしに逃げ場はなかった。
こんな先輩でも、まだ好きって思ってしまう自分がいる。
出逢った頃は、誰にもない優しさと笑顔をもってたから。
それを忘れられてないのかもしれない。
過去の栄光にとらわれているだけなのかもしれない。
それでも、別れられない…
先輩を1人にはできない。
きっと寂しいんだよね。

「誰といたんだよ?」

『誰ともいないよ!!』

誰ともいない…
隣に居てくれる人さえ、あたしには居ないんだよ。
あたしだって1人ぼっちなの。

「嘘だろ?男といたんだろぉお?!」

――…
鈍い音が部屋に響き渡った。
何が起こった?
ただ、あたしの額からは血がながれている。


痛い――…
痛いよ…

先輩があたしを殴って…
あたしはタンスの角にぶつかった。
それが運悪く額だったんだ…。
痛いよ。