恋花火

でも、先輩は笑ってる。
こんな笑顔、久々に見た。
優しい大人な顔をするんだ。
あたしはそんな笑顔が大好きだった。
その笑顔を向けられた今、一瞬どきって胸が高まった。
ほんの一瞬だけ―――…
すぐにときめきは失われ、自分でもわからない気持ちに戻る。
わからない気持ち…
自分にとって先輩はどんな存在なのか。
好きという言葉はあてはまるのかな。

「澪、遅かったね?」

『そ…そうかなぁぁ…。』

きっとこう聞く。
男と居たんだろ?
って。
違うよって答えても信じてくれないことくらいわかりきってる。
あたしは先輩のかごの中なんだもん。

「ずっとまってたんだよ?」

『…っ?』

腕を引き抱き締めた先輩。
それも付き合って初めてしてくれた時と同じような抱きしめ方で。