私が明るく“私気にしてないから、アナタも気にしないで”アピールをしても、泉未の表情は晴れなかった。


すみませんと謝ってばかり……こんなの泉未じゃない。


「甘木先輩………帰りましょう」


心配する私をよそに、1人先を歩き出す泉未。


ナンパ男トリオに絡まれるまでは繋がれていた私達の手の距離は、どんどん広がる。


「………うん」


この時私がもっと強くてしっかりしてて、いい言葉を泉未にたくさん与えられていたら……


あんな事にはならなかったのに。


恋人の温もりを失い、空を切るだけの右手が、やけに冷たく感じられた。