「ん?あ!ステラ!」
「お久しぶりです!ケヴィンさんも!」
「久しぶり、ステラ」
「買い物へ行くの?」
「はい!頼まれているのです」
「そっか、私達、外の空気を吸うために」
「どこに住んでいるのですか?」
「あの先にある城よ」

 指で方向を示しながら伝えると、ステラは表情が輝いた。

「あそこに住んでいるなんて羨ましい!フローラさんはお嬢様だったんですか?」
「ううん、一般人よ。今はちょっと理由があって、住まわせてもらっているの」
「いいな、憧れる」

 ステラは顔をうっとりとさせていた。

「最初はびっくりした。あまりにも広くて綺麗だから」

 金持ちでも何でもない私があんなところにいるなんて誰も思わないだろう。
 知れば驚くことしかできないと思う。

「私も住んでみたい。料理も食べてみたいな」
「そんなことを言われると、小腹が空いちゃうよ」
「それでしたら、目の前の店はどうですか?デザートがとても美味しいのです!」
「ステラの店は?」
「今日は定休日なのです」
「なるほどね、行ってもいい?」
「もちろんいいよ」
「ステラ、教えてくれてありがとう!何かお返しをさせて?」
「私、そんなつもりじゃ・・・・・・」
「いいの、何か私にできることはない?」

 ステラは少し考えてから、ほんのりと顔を赤く染めた。

「もし、よかったら、私の姉になってくれませんか?」
「お姉ちゃん?」
「私、一人っ子だからずっと姉妹に憧れていて、でも、お姉ちゃんのような存在でいて欲しいだけなんです」
「いいよ。でも、私は性格が悪いから逃げ出すかもしれないよ?」
「が、頑張ってついていきます!」

 ステラは両手で拳を作り、ガッツポーズを見せた。

「なんか妹っていうより、先生と生徒みたい」

 ケヴィンがそう言うと、私達は顔を見合わせて笑った。

「じゃあ、今日からお姉ちゃんだから、そう呼んでね。くだけた話し方にしていいから」
「うん、フローラお姉ちゃん。これからもよろしくね!」

 やっぱりステラが好き。笑顔に癒しの効果が高い。

「よろしく」
「じゃあ、あとは二人で楽しんで。またね!」

 小さな鞄を抱えて、風のように走って行った。

「行っちゃった」
「本当にフローラは周囲の人達に好かれるね」
「ケヴィン?」

 あれ?なんだか様子が変?

「店に入ろう」
「う、うん」

 私の気のせいかな?
 この店はカフェで中に入ると、ゆったりとした音楽が流れている。

「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」

 何人か女の子がケヴィンを見ている。本当に目立っているな。
 案内された後、メニューを見て、同じデザートにして、飲み物は別々のものを頼んだ。