再び足を踏もうとしたが、今度はかわした。そんな二人に苦笑いをしながら、少し後退すると、知らない男性とぶつかった。

「す、すみません」
「大丈夫ですよ」

 彼の持っていた飲み物が手にかかってしまったので、急いでハンカチで拭いた。

「ありがとうございます。あなたはかかりませんでしたか?」
「はい、どこも」
「良かった。レディに不愉快な思いをさせてしまったらどうしようかと思いました」
「い、いえ、むしろ私がそうしてしまって・・・・・・」
「わざとやっていないですから、気になさらないでください」

 言葉遣いや表情、しぐさを見て、紳士的な男性だと印象づけられた。

「あ!動かないでください」

 何をするのかと思いきや、どうやら糸屑がついていたようだ。

「くすっ、取れました」
「ありがとうございます」

 この人の名前を知らない。顔も今日初めて見た顔だった。

「ああ、申し遅れました。私はニール・ロックウェルと申します」
「初めまして、フローラ・モーガンです」
「フローラ?あなたがあの有名な!」
「私、有名になれるほど、立派な人間ではないですよ?」
「いえいえ、ルアナからよく話を聞かせていただいています」
「ルアナからですか?」
「私も彼女と同じ魔法大学の学生です。彼女の・・・・・・」
「ニール先輩!フローラ!」

 噂をしていれば、タイミング良く、本人が現れた。

「フローラ、途中で消えたから驚いたわ」
「ごめん、ちょっと風に当たっていただけなの」
「そう?ニール先輩、この子がフローラですよ」
「知っていますよ。さっき会ったばかりですので」
「ニール先輩は魔法もとても上手なの。私はたまに失敗してしまうの」
「たまに?しょっちゅうですよ」
「そんなことないです!」

 いつもこういうことを言いながら、じゃれているのかな。

「ルアナのことですから、ここの料理の半分は胃袋の中じゃないですか?」
「違います!そんなに食べ切れません!」
「じゃあ、頑張ってください」
「何ですか!人を大食いみたいに言って!」

 先程の二人みたい。どこもやることは同じってこと?

「フローラ、さっきからイーディが追いかけてくる。ストーカーだよね?」
「ケヴィン様にそんなことを言われるなんてショックでもう立てません」