「いや〜、ちょっと風の噂で新入生に調子乗ってるヤツがいるって聞いてね。
そんな髪して耳に穴まで開けてさ、そーゆーの俺に見つけてもらうためにしてるようにしか見えなくてね〜。
まあ先輩の俺としては、そーゆー子に一発ビシッと言ってやろうと思ってな。」
男はニタニタわらっている。
「要するに、俺が気に入らないってワケっすか。センパイ。」
安藤も不敵の笑みを浮かべてる。
って、おいおいおいおい〜!!!
俺の後ろの席で喧嘩とかやめてくれよ〜!!!
逃げたい!今すぐ逃げたい!!!
「ものわかりがいいんだな。
そうだよ。俺はお前が......っ」
男の言葉はそこで途切れた。
そして、鈍い音が教室に響いた。
男は床に倒れた。
鼻からは血が出てる。
ちょっ、これ........やばいやつじゃない?
俺はその男から安藤に視線を移した。
もちろん、男を殴ったのは安藤で。
その安藤は、さっきとは別人のような冷ややかな目をしていた。
だれだよ.......こいつ........。
安藤は男を冷たく見たまま椅子にすとんと座った。
そして、
「匡太、放課後の約束忘れんじゃねえぞ!」
俺に笑顔で言ってきた。
その顔からはあの冷ややかさは全く見えず、初めの安藤に戻っていた。
いやいやいやいや、でもこの状況はやばいっしょ!!!
人殴っちゃってるし!!!
「お、おい!安藤!何してんだよ!!」
俺は震える声でなんとか言った。
めちゃめちゃ怖かったけど。
「え?なにが?」
「なにがじゃねーよ!お前殴ったんだぞ?!」
すると、安藤の顔が曇り出した。
内心めっちゃ怖かったけど、でも俺は引かなかった。
「今のはコイツが初めに訳分かんねー言いがかりつけてきたのが悪ぃんだろ。」
「いや、そうだけど.......」
「おい!!何してる!!そこ!!」
突然おっさんが教室に入ってきた。
担任ではない。
「殴ったのはお前か?!」
おっさんは安藤を見て言った。
「そうだよ。」
安藤はうっすら笑ってる。
「職員室に来い!!」
おっさんが安藤の手を引っ張った。

