目の前には、相変わらず変わらない祐樹がいた。

「祐樹……」

今日もダメ。

ずっとそばにいるのに、声なんて聞こえてない。

前、公園で後悔するから告白したって言ったよね?

私、今すごく後悔してる。

早く病気のこと教えてくれたら、早く気持ちに気付けてたのかもしれない。

後悔したって遅いのはわかってるけど……

それでも、後悔しちゃうんだから。

「今日は……帰るね。また明日来るから」

そう言って、立ち上がった。

握った手を離そうとしたけど、離れない。

いや、離したくない。

「明日、明日も来るんだから……」

自分に言い聞かせ、手を離そうとする。

が、今度は本当に離れない。

「えっ……」

まさか……!

「祐樹?聞こえる?私、千尋だよっ」

聞き取れるようにゆっくり話した。

「……ち……ちひ、ろ……」

生きてる……?

夢じゃないよね。

現実なんだよね?

今話してる、目の前にいる人は本物の「祐樹」だよね?

「祐樹……!」

床に膝をついて、祐樹の目をまっすぐ見つめる。

「待ってたよ……いつも、遅いんだからっ」

今までこらえていたものがすべてあふれ出した。

やっぱ我慢してたんだ。

自分がわからないほどに。

「わ、る……かった。おれ……」

祐樹の目はうっすらとしかあいていない。

「話さなくていいよ?無理しないで」

私は祐樹を抱きしめた。

久しぶりのこの暖かさ。

よかった……本当に生きてた。

それ以外、何も考えられなくて。

「やくそく、だ、から。千尋と……の」

私はただ頷いた。

自分の愛おしい人が生きてるんだもん。

あふれる涙を止めようとはしなかった。


2人で生きるために、毎日星に願い続けたよ。

「祐樹がずっと、好きでいてくれますように」って。


~end~