「俺、あの時からちぃが好きだった」

「私も、きっと好きだったんだと思う」

「あのころの関係に戻ったら、ギクシャクすると思って……このままでいいかもって思ったんだ」

妹のこともあって、ちょうどいいから「ちぃ」って呼ぼうと思った。

思い出されたくなかったから。

祐樹はそう教えてくれた。

私は心のどこかが思い出したかったのかもしれない。

でも、それとは裏腹に、祐樹は思い出させたくなかった。

その気持ちを察してたのかな。

「ただ、星を見るだけの仲だったのに。気付いたら頭ん中、ちぃでいっぱい」

こんなに一途になったのは初めてだった、と祐樹は笑った。

今にも涙がこぼれそうで、上を向いた。

滲んだ視界の隙間から、星空が見えた。

「綺麗……」

昔、祐樹と見上げた星空みたいで、目が離せなかった。

本当に泣きそうで唇をかみしめた。

すると、頭をポンとたたかれた。

そして抱きしめられた。

「今まで、俺が苦しめたから。泣いていいよ?」

だから……と祐樹が続けた。

『一緒に、生きようぜ?』

また脳裏に浮かぶ、昔のこと。


『俺、死ぬかもしれないんだ。そしたら千尋と会えない』

『ヤダ!死なないでよ!祐樹がいなくなったら、私も消えるから』

祐樹に死という言葉を使われたのがショックで、勢いで言ってしまった。

『大丈夫、死なないって約束する。だから消えるなんて言わないで』

俺が悲しいじゃん、と。

お母さんのこともあって、たまにだけど、消えたいなんて言っていた。

『だから……一緒に、生きようぜ?』


昔とまったく同じことを言われた。

私って、こんなに弱かったんだ。

でも、たった1人の存在で、こんなにも強くなれるんだ。