「でもお前ら、結構お似合いなんだけどな……」

「中学校おんなじなんですよ」

だからお互いのこと結構知ってると思う、っていう祐樹の意見。

それは嘘だよ。

私は祐樹のこと知らないし、祐樹も私のことは知らない。

お互い、全く言ってないことだってあるんだよ。

「そういう綾太先輩は彼女いないんで_____」

「いない」

先輩も即答じゃないか。

「俺は彼女はいない」

そんな答え方したら、好きな人はいるっていう意味に聞こえる。

「てかさっきから、千尋ちゃん静かだね」

感心したようにいう友枝先輩。

その通り。

私はさっきから一言も発していない。

心の中ではつっこみを入れているが。

「ちぃは……大人しいからね」

祐樹は何かをためらうかのように、少し間をおいて言った。

「こんちわー!」

その疑問もこの大声でかき消された。

「おお1年!遅いぞー」

叱りながらも笑う先輩達。

声のした方を向くと1年生が数名立っていた。

皆、走って来たのか息を切らして座り込んでしまった。

「……あ、あぁ!?」

その中の1人と目が合った途端大声で叫ぶ。

「む、む、むら、もと、ち……千尋ぉ!?」

人を見て叫ぶとは失礼な。

「祐樹、おまっ」

あまりの驚きに言葉が途切れ途切れでよく分からない。

「祐樹」と聞き取れたから、祐樹が関連していると思い祐樹の方を向く。

すると、にこっと笑いVサインをしていた。