星に願いし恋

「私、来月転校するの。だから告白しちゃった」

皆がグラウンドで走っている中、私と梨奈は瑞季先輩の話を聞いていた。

もちろん、綾太先輩のこと。

それと……転校のこと。

「本当に転校しちゃうんですね」

梨奈は悲しそうにつぶやく。

「私がいなくなっても、頑張ってね!」

2人とも彼氏いるんだから、と付け足す先輩。

少しだけど、未だに祐樹が私の彼氏だとは思えない。

「すいませんっ……!」

声がしたから後ろを振り向くと、息を切らした海咲ちゃんが立っていた。

「靴を履き替えてたら、先生に仕事頼まれて……遅れてすいません!」

「いいのよ。祐樹、先に来たし」

それを聞いて、ホッとした表情を見せている。

「瑞季っ、ドリンク用意して!」

休憩時間に入ったようで、皆がベンチに向かってくる。

その中で綾太先輩が瑞季先輩の名前を呼んだ。

瑞季先輩は笑顔で「了解」と言って立ち上がった。

「手伝います」

そう言って梨奈は瑞季先輩と一緒にドリンクを運び始めた。

私もタオルの用意をするため、立ち上がった。

「一緒にやっていい?」

海咲ちゃんが隣に立っていた。

ただ頷くと、何故か笑顔になった。

先輩から順番に配って行く。

「綾太先輩、タオルどうぞ」

いつも以上に笑顔の先輩は、もっと笑顔になって受け取ってくれた。

先輩、すごく幸せそう。

「はい、修也兄ちゃん」

修也兄ちゃんにも手渡すと、ありがと、と言って受け取ってくれた。

次は2年生。

そして1年生に配りだした。

修平にタオルをあげた後、祐樹の方へ向かおうとしたら。

「はいっ、祐樹君。お疲れ様」

そう言って、海咲ちゃんは満面の笑みで渡していた。