午後の授業もあっという間で、すでに放課後。

私は自分の席でただボーっとしていた。

何故かやる気が起こらなかった。

皆、部活に行ったり下校したりして、教室には私1人。

黒板の一点を見つめ、頬杖をついていた。

すると突然、教室のドアが開いた。

「まだいたのか。探したんだぞ」

声の主は私の大好きな人。

「祐樹」

「颯人に聞いた。別れたって」

祐樹は朝から登校していたけど、保健室にいたらしい。

やっぱり疲れがたまってたんだって。

今日は朝から一緒に登校はしなかった。

修平に学校への道をはっきり覚えさせるために。

祐樹は昼休みになって教室に行ったけど、颯人に無視されて。

それで放課後どうして無視するのか聞いたら、別れたことを聞かされたらしい。

「本当驚いた。俺のせいなんだって思ったよ」

「違う!……違うの」

「違うってどういう意味?」

祐樹は私の目の前に立った。

練習着のポケットに手を突っ込んで。

「私が恋愛感情が分からないまま付き合ってたから。颯人のこと考えてなかった」

頭の中は、今目の前にいる人のことでいっぱいで。

「違う人のこと考えてた」

「違う人って誰?」

少しは分かってるはずだよね?

意地悪してるみたいに聞いてくる。

祐樹はずるい……

「……祐樹だよ」

自分で顔が赤くなってるのがわかる。

祐樹はただ笑っている。

「祐樹が好きって、気付いたから」

今にも消えそうな声を振り絞って言う。

急に目の前が真っ暗になった。

祐樹に抱きしめられたのだ。

「その言葉が聞きたかったんだって」