そう言い残すと一方的に電話を切った。

……私が行って、祐樹が立ち直るの?

ううん、私の力じゃどうにもできない。

今はただ……祐樹のお願いを聞いてあげなくちゃ。

もうすでにシャワーをあび、パジャマに着替えていた。

すぐ近くだが、念のため普段着に着替えた。

2人に気付かれないように玄関に行き靴をはく。

ドアを開けるとき少々音はしたものの、テレビがついているせいか、気付かれずに済んだ。

静かに門を閉めると、早く祐樹に会いたいという衝動から私は駆け出した。

公園までは走って数分程度。

もうとっくに夜の9時を回っている。

当然あたりは暗い。

そんな中で祐樹が来ているかどうか探すのは相当大変だろう。

そう思ったが、公園には灯りがついていたため結構はっきりわかる。

が、祐樹はまだ来ていなかった。

ベンチに座って待っていようかと足を進めた。

その瞬間、後ろから誰かに抱き寄せられた。

思わず叫びそうになったが、その優しい、か細い声で誰かわかった。

「千尋……っ」

今にも消えてしまいそうな声。

でも、強く抱きしめられている。

「祐樹……大丈夫?」

「俺、無理だよ。これ以上、失いたくなかったのに……」

この言葉に疑問を覚えたものの、今はそれどころではない。

抱きしめられている腕をそっと離すと、祐樹を正面から見つめた。

「私にできることがあったら言って。出来る限りしてあげる______」

言い終える前に、また抱きしめられた。

「こうしてるだけでいい。黙って、抱きしめてくれれば、それでいいから」

一瞬頭に颯人が思い浮かんだが、ここは祐樹が優先。

言われたように、ゆっくり抱きしめる。

すると祐樹は、一層抱きしめる力が強くなった。

怖いんだよね?

1人で抱えられなかったから、ここに来たんだよね?

どうして私を選んだかは知らないけど、私は良かったって思ってる。

祐樹の力になれたような気がしたから。

「千尋……俺怖いよ。また大事なものが消えて行く」

私は驚いた。

祐樹の言っている言葉じゃなくて、祐樹の私に対する呼び方に。

今まではちぃって呼んでたのに、千尋になってる。

考えてみれば、電話の時も、今さっきも名前で呼ばれてる。

「千尋は、ここにいる?消えねぇよな?」

「当たり前じゃん。祐樹が望む限り、そばにいるよ」

そう、私は。

祐樹の力になりたいの。