星に願いし恋

携帯の着信音で目が覚めた。

「もしもし……」

『千尋?』

声の主は、昨日付き合い始めたばかりの人。

「颯人、おはよう」

『今日、デート行かない?』

さっそくお誘いが。

でも、今日は修也兄ちゃんと修平が引っ越ししてくるし……

『それがさ、祐樹達に昨日誘われてたんだよね。3人好きな映画が今日公開なんだよ。だから一緒に見に行こうって』

「何の映画?」

『アニメ系』

アニメって……

いい歳してアニメ映画見るわけ?

『ほら、皆が今ハマってるアニメだよ。一緒に見に行こうぜ!』

あー、確かに。

皆が話してたような気がする。

「ま、暇だからいいよ」

そうしたら颯人は大喜びで。

興奮状態のまま、集合場所を教えてくれた。


集合時間は10時。

集合場所の駅までには10分程度かかりそうだったから、早めに9時半には家を出た。

1人で歩いて進んでいく。

今日は少し暑い。

だから、ロゴの入った白い半袖に、レースのついた黒いベスト、ちょっと短めの水玉のスカートっていう服装。

あんまりオシャレに興味があるわけではないから、私の服装はいつもシンプル。

「暑い……」

そう呟いた時、誰かの声がした。

気のせいかと思い、気にせず歩いていると。

「ちぃ!」という声と同時に背中を叩かれた。

「ったぁ……って祐樹」

振り向いた私を見て、すぐに目をそらされた。

「ちょうど良かった。一緒に行こうよ」

私が提案したはいいものの、さっきから私の少し後ろを歩いている。

「何で横歩かないの」

「いや、だってさ……付き合ってると思われるの嫌だろ?」

「別にいいよ。隣歩かないと、私が怒ってるみたいじゃん」

それもそうか、と納得した祐樹は私の隣に来る。

「ちぃって、いつもそんな格好?」

いつもはもっとシンプルって言ったら、興味なさそうにふーんという祐樹。

自分から聞いてきたんじゃん。

さっきからそっけないなぁ。

「……似合ってんじゃん」

ボソッとつぶやいた祐樹。

でも、顔が赤くなってるのがハッキリわかる。

そんな顔したら、私まで赤くなるじゃん。

「そりゃ、どうも」

顔をそむけて答える。

「ちぃは好きな人いないの?」

突然聞かれた質問。

「私、颯人と付き合ってる」

その瞬間祐樹は立ち止まる。

「それ、マジ、で?」

「マジです」

「……良かったな」

そう言い残して走って行ってしまった。

名前を叫んでも、祐樹は振り向いてくれなかった。

何で、良かったなって言うの?

最初は嫌そうな顔したのに。

どうして、喜ぶのよ。