教室に入ると、梨奈が駆け寄って来た。

「梨奈……おは______」

「本当なんだよね」

挨拶を遮られ、梨奈が言った言葉。

そりゃあ、信じられないよね。

私だって今でも夢のような話。

「うん」

その瞬間、梨奈が抱きついてきた。

「うっ……ちぃちゃーん」

今にも涙がこぼれそうな目を必死で隠している。

「りなぁ、どうしたの?」

「良かったの。ちーちゃんに家族がいて」

そうだった。

家族のことを祐樹から梨奈に話すように伝えてたんだった。

ま、これは祐樹が思いついたことなんだけど。

梨奈も喜んでくれるか。

なんか安心した。

「修平とちーちゃんが双子なんて……電話で聞いた時、思わず携帯落としちゃったもん」

本当なら私から話さないといけないのかもしれない。

「千尋」

梨奈を慰めていて気付かなかった私に、いつの間にか教室に入っていた修平が声をかけてきた。

「話があるんだ。屋上に来てくれねぇか」

「……分かった」

少しためらってしまったことは内緒で。

修平の後について、階段を上って行く。

ドアを開けると、日差しが差し込んでくる。

今日は雲ひとつない快晴で。

前を見るとそこには、修也先輩が立っていた。

「修也先輩」

「先輩じゃねぇっての」

「あ、」

そうだ、お兄ちゃんだった。

「今日は話があるんだ」

「話って?」

それから修也兄ちゃんは話しだした。

お父さんは病気で亡くなった。

今は兄ちゃんと修平と2人暮らしだということ。

一通り話が終わったころ、質問された。

「お母さんは?」

……反応に困るじゃん。

お父さんもいないのに。

「……もういない」

この言葉を聞いた2人は固まってしまう。

そうだよね、大切な人を2人も失ってるんだから。

「じゃあ、千尋は1人暮らしだよな?」

ただ、頭を縦に動かした。

この動作を見た2人は顔を見合わせて頷き合う。

「俺から提案なんだけど」と修也兄ちゃんが切り出す。

「俺と修平と千尋。3人で暮らさないか?」

あまりに突然のこと。

3人で暮らすなんて……今まで1人だったのが急に3人になるんだよ?

「確かに、3人で暮らす方が楽しそうだけど……」

迷惑をかけてしまうんじゃないかって不安になる。

黙ったままの私の手に修平が手を置いてきた。

「ほっとけねぇんだって、俺も兄貴も。お前が心配なんだよ」

「……しばらく考えさせて。時間をくれない?」

今出すことはできない。

考えれば、私の求める答えが出るはずだから。

「わかった。お前の望むようにしろ」

優しいな、修也兄ちゃんって。

今までは先輩、後輩だったから見た目だけだったけど。

本当に優しいよ。

どうすればいいのかな。