「あの、先輩」

「ん?」

「手、離してもらえませんか」

帰りだして数分経過。

未だに手を肩に置いたまま。

さすがにどうかと思って思い切って聞いてみる。

「いや、女子いるじゃん」

……言いたいことが分かった。

女子に絡まれたくないからこうしてる、と。

これは明日、私が被害にあうのでは?

まぁ、仕方ないかな。

「千尋」

先輩が前を向いたまま私の名前を口にした。

「何ですか?」

「彼氏作ったことある?」

何を言うかと思えば……

「彼氏なんて、つくったこと……」

まてよ。

颯人は彼氏に入るのか?

あの頃は、そこまで本気ではなかったし……

ま、一応1人に入るかな。

「たぶん、1人です」

たぶんってなんだよ、と先輩は苦笑してる。

夕陽に照らされた先輩の顔が眩しい。

先輩がモテる理由がわかる気がする。

何気ない動作でも、輝いて見えるもん。

そう思っていた瞬間。

「こうされたら?」

先輩の顔が目の前にあった。

顔立ちの良さにドキッとする。

が、それと同時にビクッとしてしまう。

修也先輩ってこういうことするの?

逃げたいって思うけど、体が言うこと聞かなくて……

「動けない?」

コクンと首だけを動かす。

「あはははは!」

ゆっくり顔を離した先輩は何故か大声で笑い始める。

「何で笑って……」

「いや、ごめん。千尋の驚いた顔見たことなかったから」

「そんな理由で!」

「悪かったって。ま、驚いてる顔も可愛かったよ」

……女子の扱いが慣れてますって言ってるみたい。

そんなことするからモテるんだよ……

先輩はきっと、自覚してないんだろうね。

だって今でも頭にクエスチョンマークが浮かんでるから。

「で、先輩。話ってなんですか」