光哉って……案外いい奴なんだ。

人のために恋を諦めるなんて。

私だったらどうかな。

颯人が取られそうになった時、何か思ったかな。

いや、思わなかった。

だって颯人と私は約束してたから。

「ずっと一緒」って。

だからその心配はしなかったんだ。

しなくても平気だと思っていたから。

「光哉、いい奴だね」

「……急になんだよ」

珍しく光哉が照れてる。

いつもは、だろ?なんて言って受け止めるのに。

私が祐樹を好き、か。

梨奈は分かってるかな。

自分自身でもわからない、この感情を。

「光哉、私のどこが良かったの」

「んー、1人でも堂々としてるところ。後、案外笑った顔が子供っぽいところ」

よく分からない。

私って本当に恋愛分からないのね。

そう実感した。

「あ、俺のこと好きになったらいつでもOKしてやるぞ」

今でももちろんOK!なんて騒いでいる。

あんたのことなんか、絶対好きにならないっての。

これだけは言いきれる。

まぁ、光哉もクラスでは結構モテてるみたいだし。

いつかは彼女できるでしょ。

彼氏がほしいとはあんまり思わないし。

何より好きな人が分からないし。

「クラスの男子で、お前を狙ってるやつ多いぞ。気をつけろー」

「そんなの分かってるし」

嫌でもわかるわよ。

告白されるんだから。

「面倒ね。告白ってのも」

「お前……告白されんのが面倒って、どんだけモテたら気が済むんだよ」

大げさに溜息をつく光哉。

こうして、光哉と話したのも久しぶり。

結構盛り上がれるじゃん。

時間もあっという間で、もう昼休みも終わりそう。

最後にからかってやるか……

「私、もう戻るね」

「おう!俺、もう少しここにいる」

歩き出そうとして立ち止まる。

そして前を向いたまま話す。

「ねぇ光哉。いい奴だね、あんた。惚れちゃった」

案の定、からかわれていることも知らず目を大きく見開いている。

「付き合ってあげてもいいよ」

「あ、つきあ……へ?」

どんだけ動揺してるのさ。

さすがに笑いをこらえきれず、光哉が少し可哀そうになって、嘘をばらした。

「嘘だよ」

「…………」

黙ったままうつむいている光哉。

「期待したじゃねぇーか!」

顔を真っ赤にしながら私を向く。

「アハハハ!面白すぎ!光哉って案外面白いのね」

そう言い残して屋上のドアを開ける。

「本当、何すんだよ」

光哉がこんなことを呟いているのも知らずに。

――――――さっきの嘘の告白を聞かれていたのも知らずに。