「一番に聞いてほしかったことっていうのは……」

耳元に顔を近づけて。

「彼氏、できたんだ」

……梨奈に、彼氏が。

なんか自分まで嬉しくなってきた。

思わず笑顔になる。

「あ、ちーちゃん笑顔。良かったー!」

「彼氏ってさ」

顔を赤らめる梨奈。

やっぱり。

修平だよね?

「やったね、梨奈」

「うん!しかも、あっちから告白してきたの!」

昨日の帰り、一緒に帰ろうと誘われたらしい。

嬉しさがこみ上げる中、急に名前を呼ばれて。

「俺、梨奈が好きって告白されたの!」

その興奮は今も解けてないらしい。

良かったね、梨奈。

幸せそうな梨奈を見ると私まで嬉しくなる。

「……気分、悪くしてないよね?」

何で、幸せな報告聞いて、気分悪くなんかならないよ。

「むしろ幸せ」

少し笑顔でほほ笑むと梨奈も笑った。

「なるほどねぇ」

急に後ろから声がした。

私の前にいるはずの祐樹が何故か後ろにいる。

「白石、喜びすぎだろ」

「だって、嬉しいじゃない!」

「修平は、見た目はいつも通りだけどな」

3人一斉に修平を見る。

祐樹の言った通り、「見た目は」いつも通りの修平が友達と話していた。

「でもあいつ、結構顔に出てるよな」

……確かに。

超笑顔なんだけど。

分かりやすいな、梨奈も修平も。

そういうところも可愛いけどさ。

「ほんっと夢みたい!」

夢ねぇ……

でも、それが現実なんだから、それ以上の幸せはないよね。

思い描いていたことが叶うんだから。

そんなに簡単にいくこともないけど。

「いいな、白石」

突然、祐樹が言いだした。

「好きな奴と両想いになれて。本当に幸せそうだもんな」

「えへへ」

梨奈は顔に手を添えながら笑う。

なんとも可愛らしい仕草。

こういう子たちがモテるんだよね。

「ね、修平君!」

耳に入って来た、聞きなれた声。

修平を呼んだのは海咲ちゃんだった。

「何?」

「なんかいつもと違う。いいことあったんだ」

ニコニコしながら聞いている海咲ちゃん。

その言葉を気がかりに、ふと梨奈の方を向いてみる。

案の定、ふてくされた梨奈が立っている。

「海咲……修平も取るつもり?」

漫画みたいに梨奈の後ろに、今にも炎があがりそう。

「俺、用事あるから」

修平は自分の席を立って、海咲ちゃんとの会話を無理やり終わらせたみたい。

そしてこちらに向かってくる。

何事かと思えば、すれ違いざまに梨奈の頭に手を優しくおいた。

梨奈の反応が分かってたのかな。

さすが彼氏さん。

彼女のこと良く分かってるじゃん。