星に願いし恋

「泣くことなんて悪くねぇじゃん。生きてる証拠だぞ、涙は。泣くってことはそれだけ思いがつまってるってことだろ?」

優しく話す祐樹。

そのせいで涙が止まらない。

『涙は生きてる証拠』

私が、この世界が消えればいいと、私も消えればいいと思ったのはちょうど中1のころ。

お母さんが亡くなった事実をかき消し、世界もなくなれと思っていた。

何で幸せな人と不幸な人がいるのさ。

皆、不幸になればいい。

亡くなる人がいるなら、皆消えればいい。

それなら誰も悲しまない。

そう考えていた。

そして私自身もいなくなれば、悲しみが消えて楽になる。

そう考えてしまった。

お母さんがこのことを知ったら悲しむだろうなんて思っても、もういないんだから。

自分の思い通りの世界がほしかった。

祐樹は私の横にしゃがみ、背中をさすってくれた。

「泣けよ。今まで我慢してただろう?」

何でこんなに優しくしてくれるの?

涙という言葉と意味を、自分の中の辞書から消した私が。

そんな私がまた、泣くなんて……

「やっとわかったよ」

そう言って話しだした祐樹。

「お前が人とのかかわりをつくらない理由」

理由?

「その人がいなくなった時、自分がいなくなった時……自分や相手が悲しむからだろう」

……そうなのかな?

自分でもわからない。

人を避ける理由が。

でも、言われてみればそうかもしれない。

自分では、人間関係が面倒だからって理由で本当の気持ちを消してた。

実際は、そういう気持ちがあったのかもね。

「お前は頑張ったよ……お前は______」

ほら、また私のことを強いって言うんでしょ?

今まで何度も言われた。

顔では嬉しそうにしてても、全然嬉しくなかった。

でも、祐樹が言ったのは。

『お前は_____強くない』

強く、ない。

初めて言われた言葉だった。

「1人で我慢して、それで周りが傷つかないと?」

そう。

我慢すれば、周りは傷つかない。

「馬鹿野郎。んなわけあるか」

そして、祐樹は私を抱きしめた。

いや、私にとっては抱きしめてくれたの方が正しいか。

「やめろよ。我慢するなって……俺が苦しいだろうが」

次第に強くなっていく腕の力。

もう、こんな涙は見せないよ。

本当に強くなったら、その時に涙を見せる。

祐樹は分かってくれた。

私の本当の気持ちを。

颯人しか分かってくれないって、無理やり思い込んでたんだね。

本当にバカだよ、私は。

誰にも頼らなくて、いや、頼れなかった。

あんまり頼り過ぎて、嫌われるのが怖かったのかもしれない。