でも、もうその気持ちはない。

颯人が女子と話してても何か思うわけじゃないし。

まぁ、颯人が女子と話すのは何か会った時だけだし。

「さっきの試合も修平応援してたんだよね」

ニコニコして言う梨奈。

「でも祐樹君に、いいとこ全部もっていかれたもんなー」

残念って言いながらも優しく微笑む。

「祐樹君、今クラスですごいモテてるもん。その分修平は今は、安心だけど」

今はってところを強調している。

やっぱりモテるんだ。

私、全然知らないんだなぁ。

先輩すら知ってたし。

「でも、祐樹君。絶対好きな人いるよね!」

「そうかな」

「だって、他の人の好きな人には興味もつくせに、自分のことは絶対言わないの」

自分のことに関して口が堅すぎるんだよねーと苦笑い。

確かに、祐樹が自分の好きな人のこと言ってるのを聞いたことがない。

「噂では……ちーちゃんとか海咲とか!」

「え!?」

私が……っていうのは置いといて、海咲ちゃん?

「何々?自分のこと言われてびっくりした?」

「いや、海咲ちゃんって……」

「私も驚いた。でもね、結構2人が話してるの見てる人多いんだって」

私も見たことあるしと付け足す。

「私、海咲苦手だなー」

「どうして?」

「ちーちゃんもやめたがいいよ。利用されるから」

……海咲ちゃん、やっぱり利用してたのか。

なんでも、海咲ちゃんが祐樹のことを好きっていうことは皆聞いてるらしい。

好きな男子が一番話す女子と仲良くなって、少しでも男子に近付こうとする。

で、自分はその人が好きだってその女子に言って、もっと近づく。

……いやな作戦だね。

その作戦にまんまと引っ掛かってたわけか、私は。

おかしいと思った時点でやめておくべきだった。

バカになったね。

「……ごめんね?ちーちゃん、結構海咲と仲良くしてるのに」

「いや、私も少しおかしいって感じてたの。ありがとう。教えてくれて」

「ううん。私も被害者みたいなもんだよ」

「え?梨奈も」

「うん」

それから梨奈は話し始めた。

梨奈はある男子が好きだった。

その男子とは結構話していた。

ある日、海咲ちゃんが急に仲良くしだした。

同じくらいに海咲ちゃんが男子と仲良くしだした。

ある時、海咲ちゃんがその男子が好きって梨奈に言ったんだって。

梨奈はとっくに自分の気持ちを海咲ちゃんに伝えてた。

それなのに、応援してくれるよね?って……

梨奈は耐えきれず、取られたくないと思い告白した。

でも男子からは。

「俺、海咲が好きなんだ」

そう言われたらしい。

「最悪だよね……だから私、海咲とは話してない」

「そっか」

私も利用されてる。

梨奈はわざわざ話してくれた。

私も気を付けないと、かな。