「てか祐樹、お前って千尋のこと『ちぃ』って言ってたっけ?」

「あーそうだけど?何で」

祐樹だけは私のことをちぃと呼んでいた。

別に違和感なく聞いてたけど、不思議なのかな。

「俺ってさ、結構他の人と違う呼び方してるの知ってるだろ?」

「あぁ」

「だから、ちぃもその言い方」

最初に、こいつらは変わったやつみたいな言い方したけど、祐樹は特に変わってる。

私と同じ係になることを嫌がってた人は多い方だった。

でも祐樹は、自分のしたい係を諦めてでも、私と同じ係になった。

しかも、中学校に入学した時からちぃと呼んでいた。

『なぁ、村本さん。あんたの下の名前千尋って言うんだろ』

『そうだけど』

『俺の妹も千尋って言うんだ』

『ふーん』

何で人に自分の妹の話を持ちかけてくるのか、意味がわからなかった。

『区別するために、村本さんのこと"ちぃ"って言うから』

『……はぁ?』

『可愛いじゃん。この呼び方』

そう言い残して、別のところに行ってしまった。

村上と村本だったから前後の席だった。

だから他の人よりは話したけど……

だからって、妹と区別するために呼び方を変える必要はないと思う。

まぁ、嫌でもなかったから気にしなかったけど。

さり気なく言った「可愛い」という言葉も違和感はなかった。