あんなに元気そうな先輩が……

大丈夫かな。

自分で思うのもなんだけど……私って案外優しい。

前はこんなこと思わなかったのに。

私が思う以上に、性格が変わったのかも。

「祐樹、今日どうかしたのか?」

何故私に聞く。

「いえ、分かりません」

だって知らないし。

あいつのことなんか関係ないから。

あいつが勝手に無視してるもん。

「そう」

思ったより簡単に諦めたな。

もう少しいろいろ聞かれるかと……

「まぁたぶん、俺が関係してると思うけど」

「え」

俺が関係してるって……分かってるじゃん。

なのに私に聞いて。

何考えてるの?

先輩は急に私の頭に手をおいた。

そして、自分の方に向かせる。

私と先輩は向き合う形に。

「な、なんで______」

「祐樹はね、口に出さないだけだよ。ちぃを困らせないように」

……私を?

名前を出されて胸がドキッとした。

なんで私まで関係するのさ。

その時、祐樹の声が聞こえた。

思わずグラウンドに目を移す。

「俺にくれ!」

同じ1年生のプレイヤーに向かって大声を出してる。

なんだか、誰よりも必死になってる感じがした。

そして、ボールをもらうとものすごい勢いで責めて行く。

「祐樹……」

呟いたと同時に祐樹がボールを蹴った。

吸い込まれるようにしてゴールの中へ。

誰も、何も言えなかった。

ただ、皆ゴールを見てるだけ。

きっと皆、あんな感情任せにプレーする祐樹を見たことがなかったからだろう。

祐樹を見ると、少しだけだけど、ほんの少しだけど。

祐樹と目があったような気がした。