「ちぃ……あ、白石!」

部活が始まり30分。

祐樹がベンチの方に向かって私を呼んだかと思いきや、言いなおし。

何で言いなおすのさ。

別に話さないからって私でもいいじゃん。

「どうしたの?」

「そこにあるタオル取ってくれない?」

これね、とすぐ近くにあったタオルを手にする。

梨奈がはい、と手渡すと。

「サンキュ!」

白い歯を見せて笑顔を見せる祐樹。

こんなの見たら、カッコいいーってなるんだよね。

女子って簡単なもんだよ。

でも梨奈は。

「______可愛い!」

なんて言ってる。

あれのどこが可愛いのか。

「ね、ちーちゃんも思わない?」

「え?あ、うん」

一応同意しておこう。

「あ、修平と祐樹君の対決だ!」

そう言ってすぐに向き直る梨奈。

私もそこを見てみることにした。

試合を始めたみたい。

Aチームに修平。

Bチームに祐樹がいる。

なんでも2人ともミットフィルダーとかいうポジションで、結構強いらしい。

試合中にも関わらず、端っこの方を通って綾太先輩がベンチにやってくる。

「あれ、先輩。何してるんですか?」

私が思った疑問を先に投げかけた梨奈。

「人数合わなくてさ。キャプテン出ないのも面白いじゃん」

自分から引き下がったのか。

誰かが外れないと始まらないしね。

ふぅーと言いながら、私の横に座る先輩。

「汗かいてますね。タオルどうぞ」

「ん、ありがとな」

「今日は瑞季先輩は来ないんですか?」

さっきから見当たらない瑞季先輩のことを尋ねる。

「あぁ、体調悪いから。帰ったよ」