颯人Side

あの場面で出て行かなければ、止めなければならなかった。

今にも祐樹が「告白」しそうだったから。

祐樹は俺にも、もちろん光哉にも言ってないが千尋が好きらしい。

最初はただたんに「ほっとけない」って理由でかまってたみたいだけど。

あいつが千尋を好きだと確信したのは、おそらく中3のころ。

俺が「千尋のことが好き」と言った時からだろう。

俺は千尋を誰よりも近くで見てきた。

俺と千尋は幼いのころからの知り合い。

千尋がただ1人心を開いていた奴が、俺。

親同時が仲が良くて昔は結構遊んでた。

そして、こんな約束まで。

『千尋。俺、千尋のこと好きだよ』

『千尋も颯人が好きだよ』

『俺が守ってやる。千尋のためなら』

『千尋も颯人がいれば嬉しいなぁ』

『他の奴なんて好きになるなよ』

『そういう颯人もね』

小さいころの単純な告白。

でも俺は、本気で千尋が好きだった。

そんなときに……

千尋の母親が死んだ。

俺が守るって、そう約束した。

でも約束は果たせなかった。

母親が死んでから、一度も会ってないから。

葬式の時に顔は見たものの、話してくれなかった。

絶望という言葉しかなかったのだろう。

それから中学に入学するまで会わなかった。

再び会えたのは「運命」だと確信した。

なのに……

祐樹はいつも千尋にかまってた。

だから俺は気持ちを打ち明けた。

祐樹は「応援する」って言ったけど。

数週間後、当然の答えが。

『俺、お前の恋は応援できねぇ』