「颯人」

階段を下りている途中。

颯人に話しかけてみる。

「ん、どうした」

「何で、あの時出てきたの」

2人が黙ってしまっていた時。

「だってさ、あのままだと弁当食えないから」

……あんたはあの場面でも弁当の心配をしてたのね。

本当、心配してくれたのかもって考えた私がバカだった。

「でもさ、祐樹もお前も困ってたから」

祐樹も困ってた?

「困ってたのは私の方だし」

2人とも困ってたって、あんたは分かってたんだね。

私には、ただ祐樹が言葉を探しているだけとしか思わなかった。

私を責める言葉を。

颯人ってこんなに賢かった?

もう少しバカだと思ってたんだけど。

「あー腹減った。今日は1人で食べるか」

何言って……

「いやー、先に下りて食べてやろうかと思ってさ」

……さっき考えたことを訂正する。

やっぱ賢く何てない。

ただの「バカ」だった。