「ちーちゃん、おはよう」

「あ、海咲ちゃん。おはよう」

とびきりの笑顔を作って返す。

でも心の中では全然笑ってないけど。

海咲ちゃんは、この高校で初めてできた友達。

海咲ちゃんが話しかけて来た時、私は冷たくした。

『千尋って言うの?いい名前ね』

『そう。関係ないでしょ』

『どうして?関係なくても褒めてもらえたんだから嬉しいでしょ』

関係ないって言われたのに、それでも笑顔を絶やさない海咲ちゃん。

『千尋ちゃん、入試1位だったんでしょ!すごいよね……私、10位内にいなかったし』

『話しかけないでよ。別の人と話したら』

『私は千尋ちゃんがいいの!他の子はいい!』

ほら、この高校にもいた。

顔だけ、頭の良さだけで判断する子。

『私の性格、分かったでしょ?構わないでよ』

『性格なんて分かってる。それでも千尋ちゃんは他の子と何か違うの!』

……どこまで諦めが悪いんだろう。

『オーラっていうか……とにかく!私、千尋ちゃんの性格好きだな』

私の性格が好きなんて言われたのは初めてだった。

『自己紹介がまだだったね。私、黒澤海咲って言うの。よろしくね、千尋ちゃん』

差し出された手を無視した私だったけど、いつの間にか海咲ちゃんのペースに流されてた。

そして今では、「肩書きだけの」友達。

友達と認めたわけじゃないけれど、海咲ちゃんが頼もしく思えていた。


「千尋、お前は早いなー」

突然声をかけてきたのは同じ中学出身の松山光哉。

こいつも、私の性格を知ってる。

なのに、避けようとはしなかった。

そして後2人。

村上祐樹と伊藤颯人。

この2人も光哉と同じ。

私を避けない奴ら。

何を考えているのか、まったくわからない。