「そうっすか」

本当は反論したくてたまらなかったが、ここは我慢。

相手は先輩だしな。

「おい祐樹!行こうぜー」

「あ、おう」

光が俺を呼んでる。

……でも。

俺がここで行ったら、ちぃと先輩はまた2人になる。

なら。

「行こうぜ、ちぃ!」

「え!?ちょっと……」

俺の斜め前にいたちぃの腕をつかみ、光と颯人の所に走る。

「祐樹……」

怒ってるのか、落ち込んでるのか、ちぃがどんな反応してるのかなんて関係ない。

ちぃには悪いけど、ちぃを先輩と2人にするなんて俺、耐えきれないから。

心の中でごめんと謝りながら腕は離さない。

昨日、部室に連れて行く時はいろいろ言ってたけど、今日は静かについてくる。

いや、俺が引っ張ってるからか?

「祐樹、お前さー」

前にいる颯人が俺の肩に手を置いてきた。

そして、顔を近づけて小さな声でこう言った。

「2人になりたいなら早く言えよー」

「は?」

1人納得したような颯人は光の腕をつかみ、

「あぁー!!用事思い出した!光、行くぞ!」

「え?何で俺だよー!」

そう言いながらも、光は引きずられていった。

先輩からは結構離れてたから、本当に2人きり。

急に何を話していいのか分からなくなって黙り込む。

「祐樹」

俺の名前を呟くように呼んだ、ちぃ。

「ん?どーした」

「ありがと」

は?何が?

「先輩から逃がしてくれて」

逃がして、くれて?

それは俺の勝手で……

そう言おうとしたが。

「あんたはそうだからモテるのよ」