「ん……朝か」

セットしていた目覚まし時計は活躍しないまま、今日の役目を終えた。

今日は珍しく早かったな。

なんて考えてみる。

あ、でも……

今から準備しても早いな。

そう思いつつも、すでに体は動いていた。


制服に着替えて、朝ごはんを作りそれを食べていつもと変わらぬ動き。

全ての準備が終わったのは7時過ぎ。

少し早かったが、ゆっくり歩けば大丈夫かと、家を出た。

鍵がかかったことを確認し、歩き出す。

門を出て曲がろうとしたところに。

「おはよう」

……何故か綾太先輩がいた。

「……おはようございます」

「びっくりした?」

びっくりしたというよりも、迷惑です。

そう言いたかったが、言葉を飲み込む。

「はい」

「朝からごめんな。いや、入部届けの紙を渡すのを忘れててさ。今日持ってきたわけ」

別に学校で渡せばいいのに……

わざわざこんな面倒臭いことしなくても。

心の中は不満でいっぱいだった。

でも先輩は1人で勝手に話を進めて行く。

昨日「先輩なら心開きやすいのかも」って思ったの、ここで撤回する。

先輩のペースに流されてただけなんだ、きっと。

私が初めてだったから、ただ気を使ってただけだよね。

やっぱりこういうのって同情心でしかないんだ。

「わざわざありがとうございます」

こうは言ってるけど、きっと不満の顔を見せているだろう。

「いいよ、気にしないで」

「それじゃあ」

そう言って、私は学校に行こうとした。

そしたら肩を掴まれて。

「いやいやいやいや。一緒に行こうよ」

……本当に迷惑です。