先に門に着いたみたいだったから待っていた。

部活が終わり帰って行く人がたくさんいる中、先輩が来るのを待った。

なんか、彼氏待ってるみたいだよね……

なんて考えてみる。

我ながら何を考えているのか……!

忘れようと頭をぶんぶん横に振ったその時。

「……何してんの」

綾太先輩が目の前にいた。

ヤバい。

変な人だと思われてる。

「いや、少し頭が痛くて……」

とっさに思いついた言いわけは、最悪のものだった。

頭痛いのに、振り回してどうする!

余計に怪しまれたに違いない。

そう思ったけど、先輩は違った。

「そっか、疲れたんだろうね。早く帰ろうか」

そう言って歩き出した。

「あ、はい!」


っていうか、綾太先輩と話してから自分のキャラが失われてる気がする……

なんか、綾太先輩には心開きやすいのかも。

会ったばかりなのにね。

「千尋ちゃんって、クラスの皆になんて呼ばれてる?」

「えっと……皆じゃないけど、女子は大抵『ちーちゃん』って呼んでます」

確かそうだよね。

呼ばれ方なんてあんまり気にしたことなかったからな。

印象に残ってるのは祐樹の『ちぃ』って呼ばれ方だけだし。

「ちーちゃんか、なんかそう言う感じがするなぁ」

そっか、ちーちゃんか……と繰り返している。

「ん?祐樹は『ちぃ』って呼んでるよね?」

「それは、あいつが考えた呼び方です」

「いいね!俺もちぃって呼ぼう!」

……何だろう。

モヤモヤする。

「親近感わくでしょ?」

そうかもしれないけど……

心のどこかでやめてほしいって思ってる。

でも、気持ちがはっきりしないから何も言えないけど。