そのあとは木本先輩と一緒にドリンクを配った。

緊張もほぐれ、はっきりと落ち着いていることが分かった。

すると残り数本になった時に祐樹が来た。

「はい祐樹。お疲れ様」

ドリンクを手渡すと、少し強引に受け取った。

「どーも」

なんとなく、怒っている感じがした。

でも、何のことか分からないし……

そう考えたけど、もう1人いたからドリンクを同じように渡した。

「ありがとう、千尋ちゃん」

やけに馴れ馴れしいと思った。

初対面だろう相手によくもこんな……

同じ学年のくせに、名前でおまけに「ちゃん」つけなんて、信じられない。

名前で呼ぶなら呼び捨てしろよ。

男子でしょって、言いたいくらい。

どんな顔してるんだと思って、顔を見たけど、極普通という言葉がよく似合う。

世間でいう「イケメン」とまではいかないけど。

「お疲れだったね、千尋ちゃん」

「ありがとうございました、木本先輩」

先輩から言われる分は全然気にしないけどさ。

「ハハハ!堅苦しいなぁ。綾太先輩と呼んでくれ」

白い歯を見せてニコッと笑う先輩は、なんとなく子供みたい。

「じゃあ、今度からそうします」

無表情は失礼か、と思い少し笑ってみる。

口角をあげる程度の笑顔を。

「……お、おう!そうだ、帰り1人になるだろ?家どこ?」

「すぐ近くです。20分くらいで着きますから」

そんなに近くでもないよ、と先輩は言う。

結構近いと思うんだけどな……

「送るから、入ってくれたお礼ね」

この先輩からの誘いを断ると面倒臭いことになりそう。

そう考え「分かりました」と言った。

門のところで待っててと言われたから、急いで準備をした。

「ちぃ、送るよ」

準備が全て終わったであろう祐樹が誘ってきた。

「き……綾太先輩が送ってくれるから。別にいい」

「……そうか。じゃあな」

自分から誘ってきたのに、なんか冷たい反応。

さっきもそうだったし……

なんか、祐樹の嫌がることしたかな?