「何してくれてんだよー!」

言葉的には怒ってる意味なんだけど、顔は超笑顔。

「いろいろあってさ」

そういう祐樹も結構笑顔なんですけど。

「っていうか、お前らのためじゃないからな」

「はぁ?違うのか?」

「当たり前じゃんか」

誰がお前らのためにやるかよ、なんてぶつぶつ言ってる。

「はいはい、おしゃべりは終わり!さっさと準備しちゃいなさい」

おしゃべりばかりしている1年にみかねた友枝先輩の一言。

その声に気付き、すぐ動きだす1年達。

私は何をすればいいのか分からず、その場に立ち尽くしていた。

すると祐樹が友枝先輩の方に近付いていた。

「瑞季さん」

どうした?って反応する友枝先輩。

そして、祐樹が私の肩に手を置いて。

「ちぃに仕事教えてやってください」

何で祐樹が言うのかな。

それはたぶん、私が頼むことなんだけど。

もしかして、私が黙ってたから?

緊張してると思ってかな。

「当たり前じゃない。言われなくても教えるわよ」

そう言ってOKのサイン。

「あざーっす。じゃあ……ちぃ、頑張れよ」

「……うん」

こう言い残してグラウンドに走って行った。

「やっぱ祐樹っていい奴ね」

いつの間にか隣に来ていた友枝先輩が静かに言った。

「あんな性格だからモテんのよ」

「えっ」

思わず驚きの声が出てしまった。

「あら千尋ちゃん。知らなかった?1年生の間では結構人気なのよ」

その言葉を聞いて、少し固まってしまった。

結構近い存在だと思ってたけど、本当に知らなかったんだね。

______祐樹のこと。