魔法のドレス



「まあ、いいじゃん。

リゼ姉、美人だし、」


そう言うのは、2個下の弟のアルだ。


すっかり凍りついていた僕は、だいぶ経ってから帰ってきたアルによってようやく溶解され、自室に戻ってきていた。


「じゃあ、お前リザと結婚すれば。」


僕のベットでゴロゴロするアルに対し、そう、投げやりに言う。


「それは無理。

俺、今、彼女いるし。」


戯けたように肩を竦ませる弟は、この町でも有名なプレイボーイだった。


それに対して、僕は浮いた話を一つも聞かないような、もてない男で。


なのになんで、あんな美少女が僕と結婚したいと言い出したのだろう。


やっぱり幼馴染だから?


いや、別に幼馴染なら他にもたくさんいたし。


それに、彼女は貴族の娘だ。


しかも、かなり上級貴族だ。


こんな、町の服屋の息子となんて身分違いにもほどがある。


「でも、なんでだろうな。

そもそも、あっちの親が許すのか?」


思っていた事をどんぴしゃで言ってくる弟にやっぱりそうだよな、って思う。


「そんなの、僕が知りたい。」


「あれかな?

駆け落ちってやつ。」


「……。」


また面倒な事を。


それでも、リザならやりかねない。


僕以外には、猫を被っているリザは普段は周りに従順だ。


しかし、彼女の時々起こす反抗的な行動には驚かされる。


彼女にもどこか譲れない所があるらしい。