魔法のドレス



「お許しも何も、あんな年がら年中ぼーとしてる息子を貰ってくれるなんて、こっちが助かるわ。」


「ちょっと!年がら年中ぼーとしてる息子って僕の事だよね!」


「そうよ。私の息子でぼーとしてるのなんて、貴方ぐらいじゃない。」


さも当然のように口にする母さんに頭が痛くなってきた。


「なんで僕とリザが結婚する事になってるの!」


「あらさっき、キスしてたじゃない。」


母さんのリザ贔屓は昔からだ。


リザと僕を引っ付けようと、裏で動いてた事も知っている。


意外と商売人の母さんが、こんな絶好のチャンスを逃すわけがなかった。


「リザもなんで素直に受け入れてるの。

別に母さんの頼みだからって、いい子ぶって聞かなくてもいいから!」


リザは僕と結婚したくないだろうと思って言った言葉だったが、返ってきたのは反対だった。


「だって私、フェリと結婚するために戻ってきたんだよ?」


もう何も考えたくなくなってきた。


きっとこれは夢だ。


誰かそうだと言ってほしい。


「まあ、なんて嬉しい事を言ってもくれるのかしら。」


「リザが……リザが……」


「さ、あんなうわ言言ってる子は置いて、あっちでお茶しましょう。

今日はたまたまマドレーヌを焼いたの。」


「マドレーヌですか?

あのレモンの入ったの有りますか?」


「あるわよ〜。」


「おばさま大好き。

私、あれ大好きなんです!」


「ふふふ、私も好きよ、リゼちゃんの事。」