魔法のドレス



「おばさま?」


衝撃を受けて機能停止となっている僕の腕の中から少し出た彼女は、少し体をずらして扉を開けた人物を見る。


「え、?」


「おばさま!」


そう言うが早いか彼女は僕からすんなり離れて、僕は置いてきぼりをくらう。


「お久しぶりです。

リゼです。リゼットです!」


手を握って言われたその言葉に母さんの目が白黒する。


「リゼちゃん…?」


ほうっと夢見心地のように呟かれたその名前は、信じられないとでも言いたげだった。


「母さん、昔よく遊んだリザだよ。」

遊ばれたというほうが正しいが。


「そんな事知ってるわよ!」


母さんから間一髪入れられたその言葉に、ため息を付く。


どうしてこうも僕は立場が弱いのだろうか。


「本当にあのリゼちゃんなのね?」


「はい!」


そう言うが早いか、母さんはリザに抱きついた。


母さんはこの上なく嬉しそうで、リザも顔は見えないが、この再会を喜んでいるようだった。


まったく、僕との態度の違いに呆れかえる。


昔もリザは母さんによく懐いてたっけ。


母さんもリザを実の娘のように可愛がっていた。


僕は男兄弟しかいないから、たぶん嬉しかったのだろう。


抱き合ってから離れて、談笑していた彼女たちを、ぼーと眺めていた僕だったが、ある言葉だけは、確実に入ってきた。


「やっと、リゼちゃんが私の本当の娘になってくれるのね?」


喜びに満ち溢れた母を阻害するようで悪いが、それはどういう意味だろう。


「はい、おばさまがお許しになるのなら。」