「やっぱり私が見込んだだけあるわ。」


そう言うと、ふわりと鼻先を良い香りが掠めた。


気付くと彼女は僕の首に手を回して抱きついてきていて、既視感を感じるが早いか、またキスされていた。


今度は頬にだったけど。


「なっ!」


顔が熱い。


さっきは、驚きが強かったけど、今はある一種、冷静に判断が出来るから、もう色々やばい。


顔が赤いであろう僕を見て、彼女はいたずらが成功した悪ガキのように笑ってみせた。


ああ、まただ。


こうやって、昔から、僕をいじめて楽しむのだ。


さっき抱きついてきた反動で彼女の腰に回していた両手を使って、彼女を剥がそうとしたが、困った僕を見るのが楽しいのか更に密着するように抱きついてきた。


柔らかい体を押し付けられて、しかも何処を触ってもダメな気がしてきて、最後の抵抗の手段として声を出す。


「ちょっと、近いって!離れてよ!」


必死な僕の言葉に対し、彼女はくすくす笑っただけで、今度は僕の首に甘えるように頭を擦り寄せてくる。


髪の毛からシャンプーかなんかのフローラルな匂いがして、頭が沸騰しそうだった。


「…離れて、って……」


弱々しく吐かれたその言葉は、僕の状態を表してて、理性と欲望の狭間で、戦っていた。


「本当に離れてほしい?」


僕を見上げてそう聞く彼女は確信犯だ。


特に女性経験が豊富でもない僕だが、普通の年頃の男子であって、そういう欲望だってある。


それに、目の前にいるのは、性格はいまいちだが、見た目は、天使の美少女だ。


うっ、と黙り込んだ僕に、彼女は更に追い打ちをかけてくる。