「痛い。」
それだけ言うと、彼女の足元にしゃがむ僕は、冷たく見下ろされた。
そこには、もっと優しくやりなさいよ、という感情と、そんな事もできないの、という侮蔑が含まれていた。
「いや、だって、消毒してるんだから、痛いのは当たり前。」
「当たり前?」
「うん。」
「どうして当たり前なのかしら。
違うでしょ。
貴方が無能で、学習能力がなく、向上心がないから、しようとしないだけでしょ。
それを当たり前、だなんて、よく言えたものね。
少しは、良くしようとか努力したらどうなの?」
唖然とした。
どう見ても同じ年の少女にこの言われよう。
しかも目線は絶対零度の冷たさ。
「ほんと変わってないな。」
いらっときたから、立ち上がって、そう言い返せば、彼女もソファから立ち上がり、
「貴方こそ、その頭の中身は、相変わらず何も詰まってないのね。
せめて綿でも詰めといたら?」
2倍になって返ってくる。
やっぱり、何も変わってない。
そこでふと、あ、変わった、と思った。
目線が違うのだ。
昔は一緒だったのに、今は僕のほうが、高くて、彼女は見上げるようにこちらを睨んでいた。
「そっちだって、その性格の悪さ、少しは直したら?
そんなんじゃ、誰も寄ってこないよ。」
僕だって、負けてられない。
もう、昔とは違うんだと、思わせたかった。
「あら、言うようになったのね。」
突然、彼女は面白そうにそう言って笑った。
次は何を返されるのやら、と身構えていた僕は、その変貌に拍子抜けした。
そう、いっつもこうだ。
僕は彼女に勝った事がない。