「フェリ、また上手くなったね。」
「まあ、王都で色々勉強したから。」
へーというリザは全身鏡で、自分の姿を写し、確かめるように、手を髪に当てていた。
「やっぱり、町の子は、髪を自分で結えるんだよね。
私も出来るようにならないと、いけないのかな。
これまでは侍女任せだったけど。」
そう言ったはいいものの、彼女の顔には無理、とでかでかと書いてあった。
昔からリザは自分の事、特に容姿に関しては無頓着だった。
「いいよ、別に出来なくても。
毎日、僕がやってあげる。」
その様子が、面白くて、クスクス笑ながらそう言えば、ちょっとポカンとされた。
なんでだろ、と思って自分の言葉を振り返れば、案外恥ずかしい事を言っていた。
毎日とか、これからずっと一緒にいる事前提じゃん。
プロポーズじゃあるまいし。
プレイボーイの我が弟でも、こんなクサイ台詞は吐かないだろう。
赤面した顔を隠すように、櫛とか片付け
てくる、と店の裏に引っ込む。
「毎日か…
変な期待させないでよ。
この天然、無自覚野郎が。」
一人残されたリゼットは、そう漏らして、椅子に腰掛けた。
ほんのり熱を持つ顔を、落ち着かせるためにも。

